死のメール
 そしてあっという間に一年という年月が過ぎ、俺と友嘉は卒業式を迎えること
となった。
卒業式の翌日に合格発表も控え、卒業式の前日・卒業式当日・そして卒業式の翌
日は緊張する三日間になると思っていた。
だが、俺の予想は外れた。この三日間は、最悪で怒りに満ち溢れた三日間となっ
てしまった。

『明日卒業式だね。やっとこのクソ中学校とおさらば出来るよ。』
『ははは…まぁ、ちゃんと卒業出来て良かった。』
『高校行ったらきっといい人もいると思うから…大丈夫だよ。』
『ありがとね、慶ちゃん。』
『うん。』

 こうして卒業の前日を普段どおり終えるはずだった。
屋上から出ようとして振り返ると石が飛んできて、その石は友嘉の額にあたっ
た。
友嘉の額は恐ろしい程簡単に切れ、傷口からは涙のように血が流れだしていた。

『…痛…』
『…何だよこれ…』

 俺はついに怒りが頂点まで達し、逃げていった奴等を追い掛けた。
この時怪我をしている友嘉の事を最優先にしてやれなかった事を俺は更に悔やん
だ。

「慶ちゃん…何でさっきから黙ってるの?」
「え?あぁ…ごめんごめん。」

 慶嘉のお陰で俺は友嘉の姿をきちんと見られるようになった。
今夜は久々に一緒に寝ることにしたのだ。
冷たい友嘉の体を抱き寄せ、温めるようにして優しく友嘉を抱いた。
友嘉はいつものように俺の胸に顔を埋め、俺にぴとっとくっついていた。
昔のような暖かさはなかったが友嘉にも何の変化はなかった。
また昔のように戻り、親子三人で生きていく事は出来ないのだろうか。そんな事
を考えていた。
だが、この願いが天に届くはずはなかった。
一度死んだ人間がこの世に同じ人間として生まれてくるのは不可能な事だから。
それでも神様は一時だけ友嘉と居る時間を俺たちに与えてくださった。
その時間を大切にし、友嘉と共に過ごせる時間を無駄にしないようにと思ったの
だった。
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