死のメール
 この時友嘉は、初めて俺の前で涙を見せた。
普段泣くような時に無理矢理笑っている…そんな友嘉が初めて涙を流したのだっ
た。
そして…

『…慶ちゃん…私、生まれてこなければ良かったかな…』
『何言ってんだよ…』

 友嘉が弱音を吐いている姿も初めてみた。
今まで辛いことがあっても決して弱音をはかなかった友嘉。
ずっとずっと我慢を繰り返していたのだろう。

『今日だけは…無理しないでいなよ。いや、これからずっと。せめて俺の前で
は…本音見せなね。』
『…ありがと…慶ちゃん…ありがと…』

 少しでも友嘉が本音を言ってくれて良かったと思った。
このあと友嘉は担任に許可を取り、ジャージを着て家に返った。
家に返るとまだ三歳になったばかりの慶嘉が不思議そうに友嘉を見ながら出迎え
た。

『ママぁ、学校は?』
『あ…今日は帰ってきたんだ…慶嘉ちゃん…ママ、お風呂入ってくるからそっち
の部屋でおとなしく待っていてくれる?』
『うんっ。』

 友嘉は慶嘉をリビングへ行かせると風呂場へ直行した。
急いでジャージと制服を脱ぎ、風呂へ入ると冷水を体に掛けた。
とても冷たいのは分かっていたが友嘉は鏡で自分の体につけられた傷を見ると
水で流さない訳にはいかなかったのだ。
それから10分程冷水を浴びてからバスタオルを体に巻いて外に出ると其処に
はいつのまにか慶嘉が来ていた。

『慶嘉…どうして此処に居るの?』
『だってママ一人でお風呂入っちゃうんだもん。慶嘉も一緒に入りたかっ
た。』
『あ…ごめんね。』

慶嘉は『うん。』と頷いて友嘉に抱きつこうとした。
友嘉は弄ばれた後の自分の体に触れてほしくなかったのか、慶嘉までをも突き
放していた。

『…ママ?』
『…ママは今汚いのよ…だから、触っちゃ駄目…』
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