幕末Drug。
月夜の晩に。
薬に食品に日用品、そして化粧品。
沢山の品物に囲まれ、私は今日も自分の生活の為に必死に働く。
此処は、都心から少し離れた街のドラックストア。1日に150万は売り上げる、中々の繁盛店だ。
ガコンガコンガコン
私の担当は、飲料部門。
流行りのジュースや人気のお茶を取り揃えるだけではなく、飲んだ事のないお酒やオツマミ等の管理まで任されている。
ガコンガコンガコン
飲料部門を任されてから早3年…20歳から此処でバイトを始め、重い飲み物の納品もかなり板に付いてきた。
飲み物の頭の部分を握って、冷ケースに隙間無く突っ込んでいく。
今は冬場なので、そこまで馬鹿売れする事はないが、夏だとものの数分で冷ケースが空になる。
そうなると、納品も補充も1人では追い付かなくなるのだ。
…嗚呼、冬になってくれて良かった。
『高杉さーん。』
不意に名前を呼ばれて振り返る。
『ねぇ、金庫チェックした?』
立って居たのは、副店長兼美容部員の一之瀬雛。身長150センチのミニサイズ店員。…私との身長差、約16センチ。こう見えて、私の一歳年上。
『いや…まだだよ。』
小鹿のような真ん丸の瞳で問い掛ける彼女を見下ろしつつ、そう答える。
『じゃあ、私がしてくるね。』
閉店間際に毎日やらなければいけない金庫チェック。金庫の中にあるお金がきちんと全部揃っているか、確かめなければいけないのだ。万が一お金が足りない場合、金庫の鍵を持っている面々が疑われる事になる。…まあ、足りない事なんて今までに無かったから特に心配はしていないのだけれど。
『もう…そんな時間か。』
腕時計へと視線を落とした、その時だった。
『キャッ…!!』
短いけれど、ハッキリと発せられた悲鳴が店内に響いた。
聞き覚えのある…これは…
…一之瀬雛の声だ。
…妙な胸騒ぎがする。
手にしていた缶を棚へ置くと、私は彼女が向かった方へと走って向かった。