幕末Drug。
『局長。…信じるんすか?さっきの奴らの事。 』
薄暗い屯所の中、お猪口を片手に原田が口を開く。
『未来から来たとか…怪し過ぎません?確かに変な服着てたし、髪の色も俺達とは違ったけどよ…。つーか、押し入れから登場したって辺りも含め、何もかも怪し過ぎるっしょ。異国の民である可能性も、まだ否めねぇし。』
そう言い終わると、お猪口に注がれた日本酒を一気に飲み干す。
『まあ…佐之助の言いたい事も分かるが…。』
同じ様にお猪口を手にした近藤が、穏やかな表情で原田を見る。
『彼等の背後に広がる世界を見ただろ?驚くほど眩しく…きらびやかな世界。あれが我が国の未来だと言うなら…嬉しい事じゃないか。それに、敵意は微塵も感じられなかった。長年戦いに耽っていれば分かるだろ?…悪意ってのは、微塵でも空気に交じるもんさ。』
『そりゃ、明るい雰囲気ではあったけどよ…』
近藤の言葉に原田が唇を尖らせる。
『詳しい事情は知らねぇが…男が女に馬乗りになって殺そうとしてた。あの男の目…尋常じゃなかったぜ?俺達に出会わなければ、確実に殺されてただろうな、あの子。…あんなヤバい精神状態の奴がいるなんて…まともな国になってねェ証拠じゃねぇ?』
ほろ酔い気分のせいか、徐々に声が大きくなる。
『…それは、今の時代でも変わらぬ事であろう。何かに追い詰められ、壊れた者は我を失う。…新撰組は、我を失い道を外した者を正すための部隊。…きっと、今我々がしている事がいずれ、未来にも大きな意味を齎す筈だ。』
原田の言葉に表情を曇らせることなく、何処か確信に満ちた笑みで答える近藤。その顔に、迷いは無い。
『…まあ、未来の世界の事は、トシと総司に任せよう。帰ってきたら、酒でも呑みながら土産話を聞くとするかな。』
空になったお猪口に、自ら酒を注ぐ。
そんな近藤の姿に原田は、伏せ目がちに微笑んだ。