幕末Drug。
レジの会計が終わり、今度は電源の切られた自動ドアへと沖田さんが歩み寄る。
透明なドア越しに、スピードを上げた車が映る。
『…あれ、何?』
驚いた様子で沖田さんが指をさす。
『車ですよ。馬でも人力でもない、油で動く車。』
沖田さんの隣に立ち、私は答えた。
『あんな速さで走ったら…気が狂いそうだね。』
『中には居ますよ、速さに狂う奴が。』
道路を行き来する車をぼんやり眺めながら、そう言って溜息を一つついて見せた。
『…ホラ総司、行くぞ。』
不意に背後からやって来た土方さんが、1番大きな袋を沖田さんに差し出す。
『ホラ、お前はこれだ。』
『えー…俺が?』
文句を言いながらも袋を受け取ると、事務所の方へと足先を向ける。
『…世話になったな。それじゃ、俺達は帰るぜ?』
沖田さん、土方さんの順で先に進む。これでお別れだと思うと、何故か無性に寂しく感じた。
もっと彼等と解り合えたら−…
世界は、変わるのだろうか。
そんな事を思っていると、ふと目の前を歩いていた沖田さんが足を止めた。
『…此処で出逢えたのも何かの縁、かな。君達さえ良ければ、俺達の町も見て行かない?…良いですよね、土方さん。』
沖田さんの言葉に土方さんが振り返る。
『…そうだな。未来には既に無いものが、我々の時代では見れるだろう。…来るか?一緒に。』
土方さんの言葉に、私達は全員頷いた。