幕末Drug。







−…興味本位。

ただそれだけで、新撰組が生きる世界へと足を踏み入れた。

何が起こるかなんて、想像がつかない。
でも、分からないからこそ知りたくなる。

中学や高校で日本の歴史について勉強をした筈なのに、今現在…年号や将軍の名前すら思い出すことが出来ない。
徳川さんて、何代まで続いたんだっけ…。

疑問は直ぐに解決したいタイプな私は、小声で雛に問い掛けた。しかし、即苦笑いで返される。…ああ、この子も知らないんだ。

『近藤さぁーん!』


沖田さんが、片手に持った大きな袋を揺らしながら近藤さんへと歩み寄る。


『おっ、帰って来たなー?どうだった、未来の世界は。』

近藤さんが微笑むと、部屋の空気が和やかな物に変わるのが分かった。



事務所の扉が繋がったのは屯所の押し入れだと、後に沖田さんに説明されて初めて気が付いた。
しかも、幹部が集まる部屋の押し入れらしい。…何て危険な場所から登場してしまったのだろう。登場すると共に叩き斬られなくて、本当に良かったと心からそう思った。…まあ、押し入れに繋がったお陰で命を守って貰えたのだから、結果オーライって奴だ。



土方さんと沖田さんは、手にしていた大きな袋を畳の上に降ろすと次々に中身を披露していった。

風邪薬にビタミン剤、栄養ドリンク、胃腸薬…そして大量の傷薬に包帯や絆創膏。中には傷を早く治すパッドや貼るタイプの眼帯まで入っている。


『此れが傷の化膿を防ぐ薬でー…こっちが消毒薬。』


何故か自慢げに沖田さんが説明する。
次々と袋から取り出される物に、近藤さんは目を輝かせた。


『おー…これが未来の薬か。このプヨプヨしている物は傷あてらしいが…綿がついてないぞ?』

『それは、傷を早く治す傷あてなんです。そのプヨプヨした所が傷口を塞いで治してくれるんですよ。』


店長の言葉に、近藤さんが感動した様子でそれを手に取る。

『これが有れば、怖いもの無しだな!』

『…さすがに深い刀傷なんかは無理ですけど、浅くて短い傷なら治りが早くなると思いますよ。』


近藤さんの言葉に、店長がそう付け足して楽しそうに笑う。





とても、和やかな時間。




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