幕末Drug。






初めて会った相手とこんなに打ち解け合えたのは、久々かもしれない。



薬の説明を熱心に聞く土方さん、チュアブルタイプのビタミン剤を口に放り込み、その酸味に顔をしかめる沖田さん、未だパッドタイプの絆創膏を物珍しそうに眺める近藤さん、漢方薬を掌に出し、人差し指の腹に付けて味をみる斎藤さん、冷感湿布をふくらはぎに貼る原田さん。

皆それぞれが、未来の薬に興味を持ってくれている様だ。

『すっぺー…何これ、異国の酢?』

『ビタミンCってやつですよ。それを毎日きちんと摂取すると、風邪を引きにくい体になるんです。』

『そりゃ良いな…おい総司、俺にも俺にも!』

原田さんが身を乗り出し、沖田さんが手にしているビタミン剤の小瓶を奪おうとする。

『…っと、近藤さんが先なんで。』

原田さんの手を上手く交わし、近藤さんへと瓶を差し出す。

『…っかぁーーー!ケチくせっ!!』

悔しそうに声を荒げる原田さん。その様子を見て、皆が笑う。




…こうやって大勢でワイワイ騒ぐのは、嫌いじゃない。空気が暖かくて、とても心地が良い。

自然と、私の顔も緩む。




ふと前を見ると、沖田さんと目が合った。




『…で、明日は何処に行きたい?』




いきなりの問い掛けに、皆の視線が私と沖田さんに集中する。


『今日はもう遅いから、明日。…俺、丁度非番だし、京の町で良ければ案内するけど?』


周りの反応に動揺する事無く、私を見据えて話しを続ける沖田さん。

『…おい総司、お前独りで未来からの客人4人を護衛する気か?タダでさえ客人は目立つ容姿をしてるんだ…変な輩が、金品目的にウヨウヨ沸いて出るかもしれねェ。』



風邪薬を片手に、土方さんが眉を寄せる。
それを見ていた近藤さんが、土方さんと


『何…心配するなら、トシも一緒に行ってきたらどうだ?人間、息抜きも必要だぜ。』


ほろ酔いの近藤さんがそう提案するも、土方さんは益々眉間にシワを寄せる。



『いや、そういう訳では無』『賛成ー。鬼の副長サンが一緒なら、怖いもの無しだし。』


土方さんの言葉を遮って、沖田さんが片手を上げながら答える。
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