幕末Drug。




近藤さんの部屋へ着くと、土方さんが挨拶をして近藤さんの返答を待つ。


『おーう。入れー。』

相変わらず温かみのある返事。近藤さんは、親戚の頼れるお兄さんみたいな…不良に好かれる熱血先生の様な雰囲気を持っている人だ。

近藤さんの声を聞くだけで落ち着く。…きっと、新撰組の隊士達も同じに違いない。



『失礼します。』



土方さんを先頭に、ゾロゾロと部屋の中に入って行く。


『随分賑やかだなぁ…。』


その様子に肩を揺らして笑う近藤さん。


『近藤さん…今から手短に用件を言う。了承するかしないかはアンタ次第だ。』

近藤さんの前に腰を下ろす土方さん。それに続いて私達も腰を下ろした。





それから5分程で、土方さんは今日の出来事を簡潔に報告した。藍さんの事、藍さんの探しているお兄さんの事、帰り道に出逢った浪士達の事。


土方さんが話し終えるまで、近藤さんはただただ頷いていた。


『…よしっ!ならば彼女の話を聞こう。もしかしたら、新撰組の隊士の中に兄貴が居るかもしれないしな。』



近藤さんは膝を叩いてそう告げた。


『…では、彼女を迎えに行かせます。』

不意に土方さんが右手を上げると、隣の部屋との仕切りになっていた障子が開き、顔の半分を黒い布で覆った人物が現れた。

『…山崎、新しく出来た茶屋は知ってるな?其処にいる藍という子を、沖田と一緒に迎えに行ってくれ。…もし途中で変な連中に囲まれたら、お前は藍さんを連れて先に屯所へ戻るんだ。…いいな?』


『…畏まりました。』


‘山崎’と呼ばれた人は一礼すると、沖田さんと共に部屋を出た。

『行ってきまーす。』

という沖田さんの呑気な声だけが、静かな廊下に響いた。



『…もし囲まれたら、沖田さんは大丈夫なんですか?』


私は小さな疑問を口にした。だって、山崎さんが先に行ってしまえば…沖田さんはリンチに遭うかもしれない。それなのに、何故そんな命令をするのかが不思議だった。


『…総司なら、大丈夫だ。アイツが囲まれてヤられた所は見た事がねェ。』

近藤さんが平然とそう言い切る。
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