幕末Drug。
『下手すると、山崎や藍さんも一緒に斬っちまうかもしれねェしなぁ…。暴走する総司の近くには、味方は居ないほうが安全だ。』

本気か冗談か分からない言い方をした後、近藤さんは豪快に笑った。


『…笑えねェよ、近藤さん。』


土方さんが、隣で苦笑する。
余程、沖田さんが爆発した時は手が付けられないのだろう。

物騒な冗談も、彼等にしてみれば信頼の証なのだろう。


『…で、一之瀬さん。その胸に抱えている物を見せてくれねェか?』

ふと近藤さんが雛へと片手を伸ばす。

心此処に在らずだった雛も、漸く口を開いた。

『あ…そうだ。これ、藍さんがお土産にって。』

包んで貰ったお団子を、近藤さんへと差し出す。


『そりゃあ有り難てェ。丁度小腹も空いてきたしな…皆で食うか!』

『いや、俺達はもう充分…。』

土方さんが首を横に振る。

『そうか、それなら遠慮無く頂くぜ?』

『そうして下さい…俺は、彼女達を部屋まで送って来ますんで。』


土方さんが立ち上がると、雛も続いて立ち上がった。
慌てて私も立ち上がると、近藤さんが意味深に口端を持ち上げた。


『…高杉さん。総司が帰ってきたら、茶を出してやってくれないか?』


近藤さんの言葉に、私はすぐに頷けなかった。

『お茶、ですか?』

『そう、お茶。場所や何やらはトシの小姓の市村にでも聞いて貰えれば良い。』


『…分かりました。』


近藤さんの意図が読めず困惑したものの、沖田さんには守って貰ったという恩もある。お礼もしたいし、丁度良いと思った。

『それじゃ…頼んだよ。』

近藤さんが見送る中、私達は部屋を出た。


『…大丈夫かな。』


雛が不安そうに呟く。


『心配無い。…それより、色々あって疲れてるだろ?今日はゆっくり休むと良い。』


土方さんの言葉は、非常に有り難かった。

今から元の世界に戻っても真夜中だ。それなら、此処に泊まった方がずっと楽。それに…藍さんの事も気になる。

私が捜すと言い出した以上、こんな中途半端な状態で帰宅する訳にはいかない。しかも、一度帰宅してしまったら、戻って来る迄にこちらの世界では数ヶ月経ってしまう恐れもある。


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