幕末Drug。
−…せめて、藍さんの件が片付く迄は此処に居よう。
私は心の中でそう誓った。
…でも。
此処に居て、一体私に何が出来るのだろう。
また今日みたいに狙われたら…。
そんな事を、ぼんやり考えていた。
『…此処だ。』
土方さんの言葉に顔を上げると、その部屋は丁度三本の桜の木が見える場所に位置している部屋だった。
『滞在中は好きに使ってくれて構わない。…何か困った事があれば、俺を呼べ。…すぐ隣に居る。』
…何と言う特等席。
二人で寝るには丁度良い広さだし、畳も張替えたばかりなのか、まだ青々しい。
『荷物は後で市村が運んで来る。…質問は?』
『…土方さん。』
未だ暗い表情の雛が土方さんの顔を見上げる。
『…今日は、ありがとうございました。』
精一杯の言葉と、久々に見る雛の笑顔。
『…気にするな。』
土方さんはそう言って珍しく口端を持ち上げると、『それじゃ。』と自分の部屋へ戻ってしまった。
私達も、部屋へと入り障子を閉めた。