幕末Drug。
雛が片手で紹介した先には、ピンク色の着物が掛かっていた。
『私達のイメージカラーって…やっぱりこういう色なんだね。』」
『素敵な色だと思います。雛さんのは撫子色、美穂さんのは甚三紅(ジンザモミ)という色ですね。』
『へェー…詳しいんですね。』
『はい、呉服屋だったもので。』
藍さんが照れくさそうに微笑んだ。
『あれ、お父さん武士だったんじゃ…?確か、戦いで亡くなったって…』
『…沖田さんには恥ずかしくて言えなったんですけど、本当は近所のイザコザに巻き込まれて亡くなったんです。』
藍さんが苦笑混じりにそう告げた。
『ま、ご家庭の事情は他人に言い辛い事もあるだろうし。それで良いと思うよ?』
雛が藍さんの背中を軽く叩く。
『それより…美穂はあと五分で支度する事!出来なかったら置いて行きます!』
雛が私に向き直り、真剣な眼差しでそう告げた。
…眠い時とお腹が空いている時の雛は、正直怖い。
私は大人しく立ち上がり、出来るだけ素早く支度を整えた。