幕末Drug。
部屋を出ると、土方さんの小姓を務める市村君が待っていてくれた。
『おはようござい……わっ!着物、似合いますね。きっと土方さん達の目の保養になると思います!』
無邪気な表情で笑いかけてくれる市村君。
『おはよ。そ、そんなに似合うかな?…ありがとう。』
私は小恥ずかしい気持ちになった。
『凄く似合いますよ!こんな姉が居たら幸せだろうなー…。…あ、朝ご飯、俺も作るの手伝っているんですよ。折角なんで、沢山食べて下さいね!』
…こんな弟が居たら幸せだろうな。人懐っこくて、優しくて、働き者で。
あの気難しそうな土方さんの小姓をやっている位だから、人間的にも立派な人なのだろう。
『可愛いなぁ…。』
廊下を歩きながら、雛が小さく呟く。
どうせ私と同じ事を考えているに違いない。
『さ、此方です。もう皆さん揃っていますよ。』
そう言いながら市村君が障子を開けると、既に見知った面子がそれぞれの場所に座っていた。
『おはようございます。』
私達は挨拶をすると、焼き魚やご飯、お味噌汁の香りで一杯になっている部屋へと足を踏み入れた。
『おお、来たか。…うーん、やっぱり君たちの着物姿は見応えがあるな。』
近藤さんが腕を組んで満足そうに私達を見た。
『…近藤さん、あの子達は見世物じゃないんだから。あんまりジロジロ見ないで下さいよ。』
沖田さんが目を細めて近藤さんに注意する。
『遅かったな。支度に手間取っていたのか?』
土方さんが私を見てそう問い掛けた。
『いやー…なんて言うか、まあ、そんな所です。』
《朝に弱くて起きれませんでした。》なんて、恥ずかしくて言える訳が無い。
私は適当に笑って誤魔化す事にした。