幕末Drug。



『寝坊したんです、美穂が。この子、朝に驚くほど弱いんで。』


…人生は、いつだって思い通りになんてならない。


隣に腰を下ろした雛が、ハッキリとした口調でそう告げた。


『…ぷっ。』


向かいに座っていた沖田さんと原田さんが、私を見て噴き出す。



『気にしない、気にしない!俺も良く寝坊するしよ!』



原田さんが片手をひらつかせながら、声を掛けてくれた。

『左之とお揃いだね、美穂ちゃん。』

沖田さんがニヤついた笑みで私を見る。


『はい…。』


明日からはちゃんと起きようと、私は固く心に誓った。






『さぁて、飯にしようじゃないか。』


近藤さんの一言で、皆一斉に箸を手に取った。


『いっただっきまーーす。』


沖田さんと原田さんは、勢い良く御飯を掻き込む。

『頂きます。』

私も続いて、用意された御飯に手を伸ばした。


『…美味しい!!』


炊き立ての御飯。仕事の時はお店で売っているカップ麺やパンでご飯を済ませ、家に帰ると面倒臭くて自炊はあまりしてこなかった為、こんなにちゃんとした御飯を食べるのは久々だった。


『そうだろ?此処の飯は料亭にも負けないって思ってるぜ。』

原田さんが自慢げに胸を張る。

『俺の一押しはコレだな、鯖の味醂(ミリン)干し。この焼き加減がまた絶妙なんだわ!』

こんがり焼けた鯖は、見るからに美味しそうな色合いをしていた。


きっと、現代で言うところの給食のおばちゃんの様な人達が、心を込めて作っているのだろう。
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