幕末Drug。
食事が終わると、私達はせめてこれぐらいはと食器洗いを申し出た。
最初は苦い顔をしていた近藤さんだったけれど、私達の説得により渋々頷いてくれた。
『ひゃーっ…冬の水はやっぱり冷たい!』
雛が眉間に皺を寄せる。普段なら「マズイ、皺になる」と指先で額を伸ばすのだが、今はそれ所では無いらしい。
時折飛び散る水飛沫が、雛の前髪について揺れる。
『今日は特別冷え込んでますね。』
藍さんが慣れた手つきでお皿を洗っていく。
冷たい水も何の其の、余裕の笑みで流れる流水に手を浸した。
『新撰組って…もっと手厚く持て成されてるんだと思ってた。』
綺麗に洗われた皿を、私がドンドン拭いていく。完璧な、連携プレー。
『…ちょっと美穂、藍さんと交代の時間だよ。』
『ハーイ。』
雛に怒られ藍さんと場所を入れ替わると、覚悟を決めて水の中に手を入れた。
………
つ、冷たい!!
『ホラ、しっかり洗って!』
『ヘーイ…』
仕事の時の様に、雛が隣で圧力を掛ける。
《働かざる者、食うべからず》
私はせっせとお皿を洗った。
『…人斬り集団の悪党、新撰組。』
不意に藍さんがポツリと呟いた。
『え?』
『人斬り集団の悪党、新撰組だなんて皆は白い目で彼等を見るけれど…ホントは、こんなに情に厚い方々なんですね…。きっと、人を斬るのも理由があっての事。人は、噂だけじゃどんな人か分りませんね。』
そう言うと、藍さんは何処か寂しげな笑顔を見せた。
『そうなんだ…私はてっきり、皆に頼られてる集団なんだと思ってた。』
藍さんの意外な発言に、私はお皿を洗う手を止めた。