幕末Drug。
剣の道。
朝食が終わると、隊士達はそれぞれの持ち場へと散って行った。
『朝から皆張り切ってるねェー。』
雛が感心したように隊士達を眺めて頷く。
お皿洗いも無事終わり、これと言って仕事の無い私達は廊下の端から隊士達の動きをぼんやり眺めていた。
『藍さん。』
不意に声を掛けられ、一斉に声の主へと振り返る。
『沖田さん。あ…先程の説明、ですか?』
其処に立っていたのは、相変わらず飄々とした笑みを浮かべる沖田さんだった。
『そ、彼女達の事も話さないといけないし…あと、ちょっと君に聞きたい事があるんだ。…一緒に来て貰えるかな?』
沖田さんの言葉に藍さんが頷くと、連れ立って何処かへ行ってしまった。
『私達の事、一体どうやって説明するんだろうね。』
雛が隣で首を傾げる。
でも、今の私はそれどころではなかった。
…正直、2人の事が凄く気になる。
でも、もしかしたら私が聞いてはいけないような深い話までするのかもしれない。
『…美穂?』
返答の無い私の顔を、不思議そうに覗き込む雛。
『ああ…ゴメン。確かに、どうやって説明するんだろうねー。』
雛の問い掛けに答えようとするも、意識がどうしても2人の去って行った方向へと向いてしまう。
『…2人が気になるの?』
そんな私の様子を、雛はあっさり見抜いた。
『…少し、ね。』
胸の奥に生まれつつある淡い感情…
これをどう説明したら良いのか分からず、適当な言葉で誤魔化した。
『大丈夫だって!例え私達が未来人だって事が藍さんに知られても、軽蔑したりする様な人じゃないだろうし。今まで通り普通に接しよう?』
曖昧過ぎる私の返答を、雛は藍さんの事だと捉えた様だ。
…ゴメン、雛。
私自身、やり場の無い気持ちをどうしたら良いのか分らない。
この気持ちは、未だ…
誰にも、言えない。