幕末Drug。
まるで自分の事の様に、誇らしげな面持ちで告げる藤堂さん。
『へェ…そうなんですか。』
確かに、沖田さんが剣を振るう姿はとても綺麗だ。…人を斬る姿でさえ、見とれてしまう程に。
きっとそんな沖田さんだからこそ、憧れる隊士も多いに違いない。
『…正直、其の才能が羨ましくもあるケド。』
そう告げると、藤堂さんは永倉さんの隣に佇む沖田さんをボンヤリと眺めた。
…仲間だけど、ライバル。
其処に渦巻く強さへの嫉妬も、欲望も、葛藤も…全てが彼らの力の源になっているからこそ、新撰組は何処迄も強くなれるのだろう。
『…ま、近々俺がアイツを抜いちまうだろうからなー。総司人気も其れ迄、だな。』
不意に口元に不敵な笑みを浮かべると、藤堂さんは悔しそうに眉を寄せる永倉さんの元へと駆け寄って行った。
『だらしねェなー新八つぁんは…ったく。』
『うるせえ!お前に言われたくねェよ!』
いつも通りの楽しげな遣り取りが、境内に響く。
一歩外に出れば、いつ斬られるか分からないのに…
今こうして皆と過ごす時間が、酷く愛しく感じられた。
『…ねぇ、美穂ちゃん。』
永倉さんと藤堂さんの漫才の様な掛け合いを見ていると、隣に沖田さんが歩いて来た。
『ちゃんと見ててくれた?』
『は、はい!勿論!』
『そっか…なら良いんだ。』
いつも通りの優しい笑みを浮かべる沖田さん。先程まで纏っていた冷たい空気が嘘の様に、今は穏やかな表情を浮かべている。