幕末Drug。
薬事法が改正になり、現在のドラッグストアには薬剤師の他に登録販売者という役職が存在する。昔で言うところの、薬種商のようなものだ。
薬はリスク別に第一類、第二類、第三類と分類され、薬剤師はその全てを販売出来るけれど、登録販売者は二類と三類のみしか販売出来ない。
うちのお店で登録販売者の免許を持っているのは、店長と雛だけだ。
医薬品のコーナーに着くと、土方さんはパッケージに『傷』と書かれた軟膏やクリームを順番に手に取った。隣で雛が説明をする。
一方では沖田さんが、咳止め薬の前で足を止めた。
『…この中で一番良いの、どれ?』
沖田さんが私へと視線を向ける。
『えっと…リン酸ジヒドロコデインが入った…』
あまり詳しくない分野を聞かれ、つい口篭ってしまった。
『これかな。』
それに気付いた店長が、商品を一つ手に取り沖田さんへと差し出す。
…もっと勉強しておけば良かったと、気付いた時にはいつも遅いのだ。
『ふーん…じゃあコレ、貰っていいかな?』
沖田さんがそう言うと、店長は刹那眉根を寄せた。
『あ…ああ、構わないよ。咳は酷いの?』
『いや、そんなに。たまに咳込むくらいで。』
咳止め薬を眺めながら、沖田さんが軽い口調で答える。
『そう…か。まあ、飲んでみて。きっと良くなるから。』
店長が優しい口調でそう告げた。
閉店してから1時間くらいであろうか。
薬のコーナーであれこれ説明をし、買い物カゴ二つ分の薬や衛星用品をプレゼントする事になった。
『悪いな…こんなに沢山。』
土方さんが申し訳なさそうに呟く。
『気にしないで下さい。命を助けて貰ったんだから、これくらい安いものです。』
商品は全てレジを通し、店長と雛と私で、割り勘で購入した。
命の恩人が新撰組だなんて、冷静に考えれば凄いことだと思う。本人達は気付いていないが、超が付くほどの有名人なのだから。
会計をしている間も、沖田さんと土方さんは興味津々にレジを見つめていた。