『Memory's Messiah』(ダークファンタジー)
新道『それは善かった。』

新道『これで君達も、私の“心の傷”を少しは理解出来た訳だ。』


雪華『“心の傷”…理解』


新道『人が“他人”の心の傷を知る方法は、自分自身も同じ経験をして、同じ“心の傷”を持つのが一番速いだろう?』


新道『そして…その“同じ心の傷を持った者同士”こそが、さっき滝沢君が私に言っていた様な“口先だけの理解者”では無く“真の理解者”と言えよう。それが何故君達には分からない』


雪華『確かに、貴方が今まで失って来た大切な人や貴方が今まで体験してきた事は地獄の様な苦しみだったかも知れない…貴方の言う通り“同じ経験”をしないと、他人の心の傷を理解出来ない人も大勢居るわ』


雪華『でもねぇ…でもやっぱり今貴方がした事は間違ってるわ』


雪華『自分が心に“深い傷”を負ったなら、誰よりもその同じ“深い傷”を持つ人を理解してげられるはずでしょそして、誰よりもその人の強い支えに成って上げれるってはずじゃない』


雪華『それなのに貴方は、自分の“心の傷”を他人にも押し付けて、分からせようなんて…そんなのただの“憎しみの連鎖”じゃない』

雪華『それで、その同じ苦しみを経験した人は、何が得られるって言うのよ』


雪華『これじゃあ、まるでさっき貴方が自分で言ってた、“醜い争い”そのものじゃない』


雪華『これじゃあ、貴方自身が、さっき自分で言ってた“醜い人々”と何にも変わらないじゃない』


雪華『私の妹を元に戻してよ…』


雪華『リンを元に戻してよ』


雪華『滝沢君を…』


雪華『リンの大切な滝沢君を返してよ―』


その時…リンに異変が起きた。


『パリ〜ン……シュ〜…』


今の雪華の言葉を聞き、新道からの埋め込まれていた記憶電波の受信機は跡形も無く消滅した。


新道『ん…』(これは…ま、まさか)
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