『Memory's Messiah』(ダークファンタジー)
茂が滝沢に話し出した。


茂『なぁ滝沢、お前がもし“天才”だったらどうする?』


滝沢『天才?…』


滝沢『さぁな〜…俺は別に“天才”って呼ばれた事が無いから良く分からないけどさぁ…でも、何かの“才能が有る”ってのは俺からしたら、羨ましいけどなぁ〜。』


茂『やっぱ、“客観的”に見たら誰もが羨むだろうな。』


茂『今のお前見たいに…』

その茂の言葉を聴いて不思議な顔をしていた滝沢を見た茂は更に話し続けた。


茂『でもさぁ…“本当の天才”ってのは、結構寂しいもんだぜ?』


滝沢『ん?』


茂『“人間”ってのはな…基本的に自分達と“違うモノ”には成るべく係わり合いたく無いんだよ…もしそれが我が子だろうがな…。』


茂『俺はなぁ生まれてすぐに、医者から“世界一の頭脳の持ち主”って言われて、最初は俺の両親も喜んでたよ、両親だけじゃない、親戚の人達や近所の奴らまでこぞって、俺を“天才扱い”したんだ…』


茂『けど、俺を見る大衆の目は、俺に対する見方をどんどん変えて来たんだ…』

茂『それは人間なら誰でも持つ“嫉妬”や自分達と違うモノへの“恐怖”。そして、その二つが原因で俺を“天才”から“変人”や“化け物”としてしか扱わなく成った。』


茂『更には、俺の“才能だけ”を目当てに来る国の研究機関の奴ら…』


茂『そんな俺には、本心や悩みを打ち明けられる“友達”はおろか俺を支えてくれる存在の筈の“両親”すら居なかったんだ。』


茂『それから俺は、“俺”の事を何も知らない奴らが居る“ネット”の世界にのめり込んだ。』


茂『ネットの中では姿が見えないから、皆、俺の年齢が10歳の“ガキ”だなんて思う奴は居なかった。だから俺が最新の技術をすぐに越えたり、新しいシステムを作っても、凄いって言うだけで、別に不思議がる事も無く、“普通の大人”として俺を扱ってくれた。』

茂『けど、たまたま俺の事を知っていた奴が、ネットで俺を見つけて、俺の事を“コイツはまだ10歳のガキだ”って書き込みをネット上に流したんだ…その書き込みを見てた他の連中は“なんだ、ガキの悪戯かよ”って言い始めて俺は唯一の俺の居場所を無くしたんだ。』
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