『Memory's Messiah』(ダークファンタジー)
滝沢達の前に現れた光は、一筋の光の線となり、神道の頭上を照らし出した。


すると、空に向かい、手を伸ばす神道。


その神道は言った。



神道『咲』


周りにいた滝沢達には、理解が出来なかった。


神道の言葉の意味が。


しかし、その神道へと繋がった一筋の光は次第に広がり、滝沢達全員がその激しい光に包まれた。



―神道―


神道が見た者…


それはまさしく、空から舞い降りる咲の姿だった。


空から現れた咲は、両手を広げ、神道に語りかけて来た。



咲『貴方?…』


咲『もう大丈夫。私は、ずっと貴方の側に居るから。』


咲『もう平気よ。もう、貴方が苦しむ必要なんて、何処にも無いの。』


神道は頬に涙を流しながら、咲の名前を呼び続けた。


神道『咲…咲』


咲は優しい笑顔を浮かべながら、神道を包み込む様にして、神道を抱きしめた。


咲『貴方は、誰よりも、優しかった。』


咲『貴方は、誰よりも、他人の心の痛みを理解出来る人だった。』


咲『でも…』


咲『でも、それ以上に、貴方は誰よりも寂しがりやだっただけ…』


咲『それ以上に私を愛して居てくれただけ…』


咲『だからもう、これ以上自分を苦しめないで。』


咲『もう、これ以上、無理をしないで。』


咲『私、貴方と暮らせる素敵な場所を見付けたの…』

咲『貴方と一緒に笑い合える世界。』


咲『私や貴方が望んだ、争いの無い世界。』


神道『咲、俺は…』


咲『良いの。もう何も言わないで。』


咲『私と一緒に、貴方も来ない?』


咲『私は、その為に、貴方を迎えに来たの。』


咲『苦しみの無い世界。』

咲『争いの無い世界。』


咲『安らぎの有る世界。』

咲『貴方と私が、暮らせる世界。』


すると、神道の体から、一粒の光が姿を現し、その光は神道の姿へと変わった。

そして、光が出て行った神道の肉体は、眠る様にして壁に寄り掛かっていた。


その寄り掛かる神道の顔は、晴々とした笑顔その物だった。
< 186 / 207 >

この作品をシェア

pagetop