君に秘密の恋
「何で、そこで紫が出て来るんだよ?」


ため息混じりに訊いた健一は、眉をしかめながらあたしを見た。


「それはアンタがっ……!」


紫の事を好きだからじゃん……


声に出せなかった言葉を喉元で飲み込むと、胸元がすごくモヤモヤして苦しくなった。


「俺が何だよ?」


不意に真剣な表情になった健一が、あたしの瞳を真っ直ぐ見据えている。


「何でもない……」


この状況に気まずさを感じたあたしは、思わず彼から視線を逸らしていた。


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