君に秘密の恋
「……千晶?」


すぐ隣のベランダから、健一があたしの様子を窺うように首を傾げた。


だけど…


今、顔を見られたら泣いてしまいそうで…。


あたしは健一の顔も見ないまま背中を向けて、ガラス戸を開けた。


「おい!千晶!」


あたしの異変に気付いたのか、健一はすぐにあたしの事を呼び止めたけど…


彼の言葉を無視して逃げるように部屋の中に入り、勢いよくガラス戸を閉めた。


そして、秋の夜空が見せる暗闇を遮るかのように、カーテンも閉めた。


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