王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
説明を聞いたドルメックはニヤリ、と満面の笑みを浮かべた。
トールはそれを見た瞬間理解した。
何かは解らないが逃げた方がいい、と。
咄嗟に後ずさろうとしたが、盗賊の彼に素早さで勝てる筈も無く肩をガッチリ掴まれた。
「…丁度良かった。
俺、今日はパァッと飲みたい気分なんだ。
付き合えよ、奢るぜ?」
断る選択肢を用意しているような発言だが、肩に置かれた手はNoと言うことを受け入れてくれそうにない。
「…あ〜。では、ご相伴になりますかねぇ〜…」
苦笑いを浮かべ、頬を掻きながら了承の意を表した。
その答えを聞くと、ドルメックは更に笑みを深めた。
肩に置いていた手を離し、クルリとトールの進行方向を変える。
「そうと決まれば、早速行くぞ♪」
トールの肩に腕を掛け、意気揚々と歩き出す。
(こんなに暑い中、ワザワザ男同士でくっついて歩かなくてもいいのに〜…)
内心ゲンナリとして溜息をつく。
ドルメックの身長は180弱、対してトールは165程度。
ドルメックが肩を組んで歩くには丁度良いのだろうが、何となく情けない気分に陥る。
「もぉ〜、暑いじゃないですか〜。
離してくださいよぉ〜」
そう言ってスルリと腕からすり抜ける。
「処で、どこのお店に連れて行ってくれるんですかぁ〜?
折角なんで、少々お高めな所とか〜♪」
「バァ〜カ、最近はシケた仕事しか無かったんだ。
んな金あるかよ!!」
お前が一番良く知ってるだろう、と言われてしまった。
それから、お互いに他愛も無い話をしながら暑い夏の夜の街を歩いた。