王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
――ヒュッ、…カカンッ。
空を切る乾いた音と、壁にナイフが突き刺さる硬質な音が静かな部屋に響く。
国王の顔を覆う装飾品が、見事に壁に縫い付けられていた。
国王の顔が晒される。
今まで一度も一般に明かされることの無かった国王の顔を、この広間の全員が目撃した。
勿論、これをしでかしたのはドルメック。
今、何が起こったのか解った者がどれ位居ただろう。
ドルメックは、一投目のナイフで装飾品を居抜き、頭から落ちた瞬間に二投目のナイフで壁に縫い付けたのだ。
正確な技術と度胸が無ければとても出来ることでは無い。
一本の投げナイフを手で弄びながら、不敵な笑みを国王に向ける。
「先日会った時に言っただろう?
これから命懸けで王国の為に戦う戦士に対して顔も見せないなんて、誠意のある対応とは言えないだろってさ!」
宰相は顔を真っ赤にして怒りを露にした。
「な、な、なんという事をっ!
国王陛下の御身に何かあったらどうしてくれる!」
「…そんなヘマしねぇよ。
何かあってもどうもしないけどな…。
別に何があったって、ドラゴン討伐に何ら差し支え無いだろ」
どこまでも反抗的な態度のドルメック。
離れた場所にいるテイシンは、口笛を吹いていた。
他の討伐部隊のメンバーは、驚いた顔でドルメックを見ている。