王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
今にも雛壇の上から降りて来そうな宰相を、国王が留めた。
「…良いのだ。
伝統や格式に囚われ、彼の忠告を無下にしてしまった余にも非があろう…」
肉付きの良い中年の男が重々しく話す。
威厳も何もあったものでは無かった。
(…う〜ん、これは…。
やっぱり、顔隠しといてやった方が良かったかな?)
少しだけ憐れみを覚えてしまったのは、ここだけの秘密である。
国王はもう顔を隠す気が無くなったのか、そのまま玉座に腰掛ける。
「皆、面を上げるが良い」
討伐部隊のメンバーは折っていた膝を解いた。
い並ぶ衛兵達はそのまま待機している。
国王は一つ咳払いをすると、仰々しく話し始めた。
「遠路はるばるよくぞ集まってくれた。
諸君等を呼び寄せたのは他でもない。
王都に現れたドラゴンを退治してほしいのだ。
まだ到着していない者達もいるが、全員が揃い準備が整ったら討伐に向かってほしい」
それだけ言い、討伐の健闘を祈るとサッサと引き下がってしまった。
何とも拍子抜けだ。
壁に縫い付けられたままの装飾品が、やたらと滑稽に映った。
残った宰相が、別室にて親睦を深める為に立食形式の食事を用意していることをを告げていった。
出口付近に控えていた給仕係の女性達が、討伐部隊の面々を促した。