王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
その視線の先には、少し驚いた様なアイボリーの瞳。
栗色の髪の、あどけなさの残る少年が立っていた。
戸惑いがちに、声を掛けてくる。
「アナタ、宝玉の民…ですね?」
(聞き間違いでは無いみたいだな…)
こちらが警戒しているのが分かるのか、近付きも遠ざかりもせずに佇んでいる。
若干不安そうに、ショルダーバッグの紐に手を掛ける。
その姿を見て、以前テイシンに見せて貰った召集リストを思い出す。
「……そういう君は、癒しの民か」
「えぇ。
グレード・エルニーグといいます」
礼儀正しく挨拶してきた。
誠意には誠意で、返すべきだ。
名乗らない訳にはいかない。
「俺は、ドルメック」
目を細め、相手の出方を伺う。
言いにくそうに言葉を紡ぐ、グレード少年。
「……どうしてまた…宝玉の民であるアナタが、ドラゴン討伐に?」
グレードの言い方が、妙に引っ掛かる。
この言い方ではまるで…。
「…まるで、宝玉の民の末路を知っている…みたいな言い方だな?」
思わず皮肉な笑みが浮かんだ。
見詰める先の少年は、絡む視線にビクリと震えた。
口を一文字に引き結ぶ。
その様子が全てを容易に物語ることを、この少年は知らないようだ。
「……一体どこで、その情報を手に入れた?」
探られたくない様子の少年にワザと、問い掛けてやる。