王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
「…角膜に、傷が付いてます」
なぜそんなことが分かるのか疑問に思った。
そんなドルメックを真っ直ぐ見詰める瞳の色。
癒しの民特有の能力に思い至る。
「…アイボリー・アイか!」
頷く少年の顔には、強い意志が滲む。
「……お節介なことかもしれませんが…医師として、一つ…忠告です」
これも、言いにくそうに呟く。
「その瞳は、強い“力”を引き出すと同時に…自ら光りを閉ざしていきます」
回りくどい言い方は、こちらを気遣ってのことなのだろうが…。
医師としての彼が指す意味とはつまり。
「……使い続ければ…失明するってことか…」
「……おそらくは」
様々な知識を検証した結果、導き出された答えなのだろう。
少年のそれでは無く、医師の顔になったグレードが、こちらを見ている。
「………そうか」
その一言だけを返した。
それが分かっても、ドルメックには自分の歩む険しい道程を逸れることは許されない。
何よりも自分自身の為に…。
「…医師である君に言うのは筋違いだとは思うが…」
ここまで言って、不意に躊躇ってしまった。
まだ17、8位の少年に告げるには、ドルメックの意志は余りに重い。
言葉を区切ったドルメックに、訝しげな視線を向けるグレード少年。
「?何です?」