王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
医師として…と言ったのだから、医師として受け取ってくれることを期待して、二の句を継ぐ。
「…俺には、片目さえあれば充分なんだ。」
ドルメックは、左右違う色の瞳で、アイボリーで対を成す瞳を見据える。
「この赤い瞳が光りを失っても、核石としての煌めきを失う訳じゃ無い。
俺にとって右目は、見えることが重要なんじゃないんだよ」
グレード少年は、何も言えず、視線を反らすことも出来ずにいた。
「…【宝玉の民】としての誇りを失うことに比べれば、些細なことだ。
目的の為なら、何を失うこともい問わない。
……その覚悟は出来てる」
(……そう、忌まわしいあの日…既に……)
こちらを見詰め続けるグレード少年に、苦い笑みを送る。
ショルダーバッグを握る手に力が込められているのが見て取れた。
「少しでも、」
今まで黙っていたグレード少年が言葉を発する。
「少しでも眼に、違和感を覚えたら…すぐにオレに知らせてください」
その意志の強い眼差しは、少年と呼ぶことを躊躇わせた。
きちんと、一人前の男の顔だった。
「……君が、治してくれるとでも言うのか?」
「……アナタが望まなくても」
挑む様なその表情に思い浮かんだのは…。
思わず笑いが込み上げた。
「…っはははははっ!」