王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
グレードの表情に思い出したのは、帽子を目深に被る、糸目の男。
トールであった。
王都へ旅立つその日、ワザワザ地図と馬を押し付け、ツケにしてまで再会の約束を取り付けに来た時のトールと、目の前で望まなくても助けると豪語するグレードの表情が重なったのだ。
似ても似つかぬ二人が見事に被り、笑いが止まらない。
据わった目でグレードに見られているのが分かっても、なかなか止められなかった。
ひとしきり笑い切り、ようやく収まった所で一息つく。
「…いゃ、悪い。
ふふ、酒が入らずこんなに笑うなんて、何年振りかな…?」
「は?」
少々不機嫌そうなグレード。
訳も解らず笑われては、無理も無いか。
「…その強気な発言に、勘の鋭さ…。
知り合いに、似たような奴が居てね…」
「…はぁ」
腑に落ちない、という表情だ。
真っ直ぐでお人好しなグレード。
信用出来る人間だと思った。
「頼りにしてるよ」
その言葉の意味を瞬時に読み取り、目を見開くグレード。
直ぐに笑顔になり、近付いてきた。
「……任せてください」
ドルメックは右手を差し出した。
「…ドラゴン討伐。
同じ組になるかはわからないが…。
よろしくな…グレード」
「ドルメックさん……
こちらこそ…」
ドルメックの手を、グレードはしっかりと握り返してきた。