王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
配達屋と夜の華2
握手を交わした後、彼は他の者達への挨拶回りに行った様だ。
グレードと入れ違いに、テイシンがやって来る。
隣に並び、興奮気味に声を掛けてきた。
「さっきの謁見の間でのアレ!
すげぇな、スカッとしたぜ!」
物凄く、嬉しそうである。
よほど王政に不満があるらしい。
「…アレは俺の得意分野だからな。
俺の武器は、投げナイフと身軽さ、…それに、この核石だけだ…」
そう言って、右目を覆うドルメック。
一つ、忠告しておかなければならないことを思い出す。
「…テイシン。
ドラゴン討伐の時、同じ組になったら出来るだけ俺に近付くなよ?」
「…は?どういうことだよ?」
言っている意味が分からず、聞き返してきた。
解りやすい様に、順を追って説明してやる。
「俺が【宝玉の民】だっていう話はしただろ?
【宝玉の民】の核石は、攻撃に使うことが出来るのも話したな?」
無言で頷くテイシン。
「俺が核石の力を開放したのは一度だけ、しかもロクに制御出来なかった。
今ここで生きているのが不思議な位だ。
核石のエネルギーは凄まじい。
ここに居る他のメンバーは分からないが、王都の民のあんたに、その衝撃に耐えられるとは思えないからな」
簡単に、力を使った後の惨劇を説明に付け加えてやった。
ゴクリと唾を飲み込み、答えた。
「…おっかねぇな、わかったよ」