王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
緩やかに、歩いて来るベリル。
その瞳の奥に宿る強い意思。
「私には、前に進む事のみが許された。それが辛いとも苦しいとも思わない」
落ち着いた声音に何者にも惑わされない、揺るぎ無い強さを感じた。
「己の限界を作るな」
すれ違い様に言われたこの言葉に、自身の弱さを突き付けられたドルメック。
強張った手からナイフが落ちる。
カランと、乾いた音が響いた。
立ち尽くすドルメックを残し、ベリルはそのまま闇夜に溶ける様に消えていった。