王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
揺らぐ心と白銀の慰め【氷炎の民?】
どれ位の間、立ち尽くしていただろうか。
先程の会話のやり取りが、何度も頭の中で繰り返されていた。
どれだけ考えても、ドルメックに答えは出せそうに無かった。
俯いていると熱いものが込み上げそうで、どこまでも優しく光を降り注ぐ月を仰いだ。
そんなドルメックの手に、フワリとした感触が触れる。
ビクリと身体を硬直させた。
驚いて手元を見ると、より一層の驚きが待っていた。
そこに居たのは、子供位なら軽々と乗せれそうな、白銀の狼。
月の光に照らされた姿は、神々しくもあり、また魔性の様でもあった。
思わず、溜息が漏れる。
ついさっきまで、どん底まで落ち込んでいたことなど全て吹き飛ばす程の美しさだった。
その美しい獣は、まるで慰めるかの様にドルメックに擦り寄ってきた。
「…慰めて、くれてるのか?」
ドルメックの言葉に、鼻を鳴らして応えてきた。
苦笑が浮かぶ。
しゃがみ込み、耳の後ろ辺りを撫でてやる。
気持ち良さそうに、白銀の獣は目を細めた。
「…ありがとな…。
…も、大丈夫だよ…」
思わず呟いていた。
それを確める様にもう一度ドルメックに擦り寄り、美しい獣は姿を消した。
手の内にある、エメラルドの核石を確かめる。
「動物にまで、慰められちまったよ…。
俺は、間違ってるのかな…?
……母さん…」
優しく煌めく宝石は、何も語ってはくれなかった…。