王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
何とも場違いな発言である。
ドラゴン討伐に召集された戦士とは思えない、見た目と行動。
共に居る二人も、困った表情を見せていた。
それでも同意したらしい二人がバンダナ少女の号令で一歩目を踏み出すのを眺めた。
「ねねね、凄いねっ!お城だよ?
わたし初めて見たっ!早く中入ろ〜!」
「っあぁっ!馬鹿、騒ぐなっ!
そして走るな!転ぶぞ?!」
「…まったく、しょうがないわね…。
…待ちなさい、マルタ」
言うが早いか、走り出しそうな勢いを見せる、バンダナ少女。
たしなめる白髪の少年は、自分の発する声も十分騒がしいことに気付いていない。
一番冷静に見えた光を反射しない漆黒の髪の少女が、バンダナ少女の頭を盛大に叩いて引き留めた。
叩いた拍子に、バンダナが外れ、放たれる月光。
そう、月光が少女の髪から放たれたのだ。
慌てる白髪少年。
「わぁっ?!エナ馬鹿っ!
気を付けろよ、誰かに見られたらっ…ってぇ!?」
最後まで言わせて貰えず、こちらも黒髪の少女に盛大に頭を叩かれる。
まったく表情が動かない少女は頭を抱える白髪の少年に淡々と告げる。
「…二人共、うるさい。
それに馬鹿はどっちかしら?ユリ。
どうせすぐバレるでしょ、戦う時隠せないんだから」
一刀両断にされた白髪少年は、反論することも許されず呆然と黒髪の少女を見上げている。
その賑やかしいやり取りに、傍観を決め込んでいたドルメックは思わず吹き出した。