王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
思わぬ再会と突き付けられた己の在り方2
次の日の早朝―――。
ドルメックは、ベリルの部屋の前に来ていた。
やや緊張しながらドアをノックする。
「…はい…」
そう言って出てきたのは、ベリルではなくシルヴァブロンドの長身の男だった。
大きめの赤茶の瞳と視線がぶつかる。
(…あれ?部屋、間違えたか?)
長身の男が不思議そうに小首を傾げる。
「えーと、何か用かな?」
「…この部屋、流浪の民の部屋で合ってるよな?
ベリルって人、居るか?」
それを聞いた男は、人好きのする笑顔を向け、部屋に招き入れた。
「ベリルの客か。大丈夫、流浪の民の部屋で合ってるよ。
奥に居るから上がって?」
促されるままに、奥へと進む。
この青年も討伐に参加するのだろうか。
「今来ると思うから、座って待ってるといいよ。
お茶を淹れてこようか。」
ニコニコと微笑み、給湯室へ消えた。
未だ素性も明かしてない人物を疑いもせず、あまつさえ部屋に一人にするなんて、お人好しにも程がある。
(……この人、大丈夫なのか…?)
思わず頭を抱えるドルメックの気も知らず、人の良い青年がティーカップを持って現れた。
目の前に湯気の立つそれが置かれる。
スッキリとしたミントの香りがした。
「…どうぞ。
朝、これを飲むと爽やかな気持ちになれるから」
「………どうも」
(あんたのその笑顔の方が、よっぽど爽やかだと思うが…)
流石に本人を目の前にしては言えないドルメックだった。