王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
「俺は、ベリルと同じ流浪の民のセシエル。
ベリルのサポート役として一緒に来たんだ。
君の名前も聞いていいかな?」
向かいに座った青年は柔かな物腰で名乗り、やっとこちらの素性を聞いてきた。
見た目といい雰囲気といい、威圧感のあるベリルとは対照的だ。
「……俺はドルメック。
仲間の核石を盾に呼び付けられた、宝玉の民の最後の生き残りだ」
セシエルは、納得したように頷く。
そして困った様な笑みを浮かべた。
「昨日のこと、少しだけベリルから聞いてるよ。
[民の雫]とは知らずに君の前で君の仲間を物扱いしてしまったって。
あいつ珍しく凹んでたから…。
怒る気持ちも分かるけど、余り責めないでやって?」
どうやら、昨日の件で文句を言いに来たと思ったらしい。
首を振り、そういうつもりで来た訳ではないと示す。
意外だった。
あの鉄面皮の内で、そんなことをベリルが考えていたということが。
「…確かに昨日の件で来たけど、苦情ではなく謝罪と礼を言いに…。
俺も昨日はだいぶ気が動転してたから…。
仲間を返してもらったのに八つ当たりした上に切り付けたからな。
借りは作りたくないんだ」
ドルメックのその言葉に、セシエルは微笑んで、そっか…とただ頷いた。