王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
セシエルと二人、一服しながら話しているとベリルがやって来た。
ドルメックの存在に気付き、目を見張る。
「…やあ、今朝はどうしたのかね?」
一瞬の間が空き、少し眉根を寄せて尋ねてきた。
その罰の悪そうな様子に、思わずセシエルの方を見る。
然も言った通りだろうと言わんばかりに悪戯っぽい目で見返してきた。
苦笑交じりに立ち上がり、ベリルの目の前に立つ。
訝しげに、エメラルドの瞳が見上げてきた。
「今日は、昨日の件で来たんだ。
俺の母親を今まで保護していてくれた事と…人として扱い、帰してくれた事に対する礼と…
幾ら気が立っていたからって、八つ当たりして切り付けた事に対する謝罪の為に来た。
ありがとう…。
そして、すまなかった…」
真っ直ぐにベリルを見て言った。
驚きを隠せないベリル。
「……いや、私の方こそ…。
知らなかったとは言え、大切な人を物の様に言ってしまった。
それに、君の置かれた立場は複雑だ。
知った風な事を言って気分を悪くしただろう?
申し訳なかった。許して…貰えるかね?」
ドルメックは、無言で右手を差し出した。
ベリルが頷き、ドルメックの手を握り反す。
セシエルが、そんな二人を微笑ましげに見ていた。