王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
最終的に、ベリルが選んだのは3点。
エメラルドのブレスレット、クリスタルの飾り石の付いた短剣、ムーンストーンのペンダント。
「それだけでいいのか?」
余りの少なさに、ドルメックは思わず聞いた。
ベリルが小さく笑った。
「沢山持っていれば良いという訳ではあるまい?」
そういうものなのだろうか。
使う事の出来ないドルメックには、よく分からない。
ベリルの隣にいるセシエルに目をやる。
そしてテーブルの上の品々を見て、ドルメックは思案した。
幸運の御守りとされる、ラピスラズリの指輪を手に取る。
これは確か、身代わりのアイテムだった筈だ。
「…これ、あんたが持ってなよ。
そいつが居るから必要ないとは思うけど、万が一の為にさ」
身代わりアイテムだから、魔力を操る必要も無いし…と言ってセシエルに差し出す。
驚くセシエル。
急いで首を横に振る。
「えっ?何言って…。
だって、俺は君からこれを貰える様な事、何もしてないだろ?」
ドルメックは、空になったティーカップを指差した。
「…ミントティー、美味かった。
言ったろ?借りは作りたくないんだ」
ニッと悪戯っぽい笑みを向ける。
セシエルはちょっと困った顔で笑うと、ドルメックから指輪を受け取った。
「じゃあ、そういう事にしておくよ。ありがとう」
ドルメックは荷物を纏めると、二人の部屋を後にした。