王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
先を行く者と後を追う者【雷電の民】
流浪の民の部屋を出たドルメックは、もて余した時間をどうするか考えていた。
宛もなく城内を歩いていたら、一人の男とぶつかった。
その男は片腕が無く、かなり疲弊していた。
きっと、先のドラゴン来襲によって腕を無くしたのだろう。
フラフラと、立っているのも辛そうな男に、気紛れで手を貸してやった。
人と関わることを極端に避ける癖のあるドルメックには、珍しいことだ。
自身の行動に自分で驚きながらも、男に声を掛けてやる。
「だいぶ疲労しているな、大丈夫か?」
男は疲れきった顔をドルメックに向け、礼を述べる。
「ありがとう。
昨晩、雷電の民をお連れしたことを国王様にお伝えしてきた所なんだ。
もしかして、貴方も討伐部隊の方かな?」
男の問いに頷き、答える。
雷電の民という単語に疑問を感じ、尋ねた。
「…雷電の民って、ただの伝説じゃなかったのか?
何百、何千年も生きて、雷雲を呼び、天を轟かせるとか何とか…。
もう存在すら確認出来なくなってた部族の所に行って来たのか?そんな身体で…」
片腕の男が、少し表情を曇らせて頷く。
「戦うことの出来ない身体になってしまったが、他にも命を掛けてる仲間がいる。
何もしないでいるなんて、俺は出来なくて…。
それに…ちゃんと居たんだ、雷電の民は…。
ただ一人になってたけど…」