派遣先の研修
通された部屋に安置された、穂高の死体と対面する。

「……うっ……」

焼けた肉の臭い。見覚えのあるジーンズ。
間違いない……穂高だ。
黒焦げの死体。
目玉がくり抜かれている。らしい。

「なんで……どうして」

仕事はテキトーだったし、女好きだったけど、悪い奴じゃなかった。
殺されなきゃならない理由なんてない。

「被害者は、この町の人間ではないんですか」

警官が待ち構えていたように質問をした。

「実家は仙台だって聞いてます。穂高はまだ大学生で、大学に行きながら、同じスーパーで、派遣で……来てて……」

こないだまで一緒に働いていた。
知らずに涙が滲んだ。

「よそ者か……。責任者の方は」
「はい私です」

店長のイトウが返事をした。

「研修は受けさせていましたか? この町のルールを守っていればこんなことには」
「こちらの北野森君と一緒に受けたと思っていたんですが」
「まあ、こんなことになってしまったからには仕方ありません。実家の連絡先等はわかりますか」
「派遣会社に履歴書が残っていると思います」

これは殺人事件だ。
穂高は……誰に……?

「……ま、調べたところで犯人は……」
「え?」
「なんでもありません。では、お引き取りください」

店に戻る車内で、イトウが言った。

「またあの女が……」
「まだここにいるんですね」
「いい加減、町を出ればいいものを」
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