派遣先の研修
「いえ、お客様の御宅に上げるわけには参りません。ここで失礼致します」
「遠慮なんてしないで? 汗かいてるじゃありませんか?」
「お腹痛かったんですよね? それでは」
「あがっていって、って言ってるの」

彼女は、そっと腹を押さえた。

「切られて痛いのよ……。ほら血が出てる」

血どころか、内臓まで出ている。
尋常ではない、彼女の姿に、ようやく理解が追い付いた。

黒いワンピースの女。

ああ、まだ彷徨っているんだと。
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