派遣先の研修

ポカンと、口を開けて、彼女は北野森を見た。

「何言ってるの？」
「あなたは、亡くなられているんです。もうあの町に戻ってはいけません」

「あたしは」
「包丁で殺されたんです。しかもそのあと、火をつけられた。生きていられるはずがないんです」
「そんなことない」
「あなたの、お名前は、なんですか？」
「……」
「名前を、覚えていますか？」

小さく呟いた名前。
北野森は、呆然と立ちすくむ彼女をそのままにして、寺の住職に会った。
墓地まで来てもらい、墓に刻まれた戒名を聞き、彼女の葬式の様子を語ってもらった。

「あたしの……なまえ……」
「ユキさんというんですね。僕の名前と一文字違いですね」
「……あたしは……死んでるのね……」
「もう、痛い思いをしなくていいんですよ。御家族は毎月、お墓にいらしているそうです。そろそろ、あの町から離れなくてはいけません」
「……」
「もし生まれ変わったら、またうちの店にいらしてください」

住職に事情を説明し、本堂に入り、お経をあげてもらった。

「……入店証……」
「え？」
「あたしを殺した……」
「ちょ、ちょっと待って！！」