派遣先の研修
心の中で呟く。

証拠は何もない。
彼女の証言自体が何の役にも立たない。
彼女は死んでいるのだから。
死人に口なし、とはよく言ったものだと、本当に思う。

八方塞がりだな……。

翌日、出社しても、特に変わったことはなかった。
自分の限界を知り、北野森は午後9時まで黙々と仕事をこなした。

もし、この町の人間が、彼女のことを知っているとしたら。
もし、彼女と、イトウのつながりがあったとしたら。指紋のひとつぐらいは残っているかもしれない。
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