派遣先の研修
北野森は、警察署へ出向き、ユキが殺された事件を担当した刑事に会おうとした。

「その事件の担当者でしたら、もう退職していますが」
「その方のお名前と、住所を教えていただけませんか」
「聞いてどうするんです?」
「話を聞きたいだけなんです。警察にご迷惑はかけません」

刑事たちは、一様に迷惑そうな顔をしたが、北野森は「話を聞きたい」というスタンスを取りつづけ、
その刑事の自宅を教えてもらった。


2丁目の閑静な住宅地。
退職した刑事は、カガミハラといった。

カガミハラは、どっしりした体つきの、穏やかそうな人物だった。
白髪が雑じり、静かな光を湛えた目をしていた。

刑事には見えないな、と北野森は思いながら、部屋へ通された。
あの事件はよく覚えているよ、とカガミハラは言った。

「署から連絡をもらいました。20年前のことを聞いてどうするつもりです?」
「実は……」

北野森は、黒いワンピースの女の話をありのままに話した。
友人が彼女の祟りで死んだこと、そしてユキを成仏させたこと。
殺された時にコトブキ堂の入店証を見たこと。
その入店証が、イトウのものであること。

ふむふむ、とカガミハラはメモをとりながら聞いていた。
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