派遣先の研修
北野森は、カガミハラに電話をかけた。

「明日から3日間、店長は休むそうです。なんでも奥さんが入院したとかで」
「わかりました。ひょっとしたら、この寺を探し出したのかもしれませんね」
「僕ももうすぐそちらに着きます。カガミハラさんだけに頼るわけに行きませんから」

君、仕事は……、と言い終わる前に、電話を切られてしまった。

北野森は着替えと、カガミハラの分の弁当を買ってやってきた。
張り込むにあたって、北野森も休暇を申し出ている。
その間は、かわりの派遣社員が、コトブキ堂に行くように頼んである。

寺の住職は、「捕り物はうまくいきそうですか」と茶と菓子を用意してくれた。

「すみません、張り込ませていただいてる上に、気を遣わせてしまって」とカガミハラ。
「いいんですよ、夜は暇ですからな」

お茶を飲みながら、三人は交代で見回り、異常がないかを確かめた。

塀の向こうでチラチラと懐中電灯の明かりが見えた。
「ああ、近くの交番の者ですよ。応援を頼んでおいたんです」

カガミハラは、神奈川県警の知り合いに頼み、周辺を見回りさせているらしい。
警察を退職しているのでそれで精一杯でした、と頭を掻いた。

寺には、万が一、泥棒に入られたときのために、監視カメラも設置してある。
最近増えた、仏壇泥棒に対抗するための措置だ。

「テープも時間が長いものに変えておきました。もし盗みに入られても大丈夫です」
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