派遣先の研修
「パン粉を探してるんですけど……」

声を掛けてきた女性客は、すらっとした体に、黒いワンピースがよく似合っている。
雪のような肌に、マスカラなのかつけまつげなのか、大きな目が、さらに際立って見える。
ヒールの高いサンダルを履いているが、小柄だ。

(……この町にも、こんな美人がいるもんだなあ……)

「あのー……」
「あっ! はい、パン粉でしたら、粉物コーナーにございます」

穂高は、天井からぶら下がっている、商品がジャンル別に書かれたプレートを指差した。

「この棚の、すぐ裏になります」
「ありがとう」

風が吹いたら倒れてしまいそう。
巻いた黒髪が、揺れる。
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