派遣先の研修
見覚えのある、長い髪。
誰……。

ユキ……？　



いや、違う。


「長谷川さん……？」
「よう。会社サボって、入院したって？　爆発に巻き込まれたってどういうことだ？」

長谷川美由。
彼女は、北野森が以前勤めていた名古屋のスーパーで出会った、製菓会社の社員だ。
熟れたメロンのような見事なバストで、サンタ服を着こなし、クリスマスケーキを売っていた。
クリスマス前に出会い、そのまま付き合うことになった女性だ。
しかし、半年の付き合うものの、二人のシフトが合わず、自然消滅してしまった。

聖夜の奇跡のような恋は、現実のすれ違いで、なんとなく、終わってしまった。
その後、北野森は東京で働き始めたのだ。


「……長谷川さん……。どうして……なんでここが」
「お前が派遣で行ってるスーパーに、アイスケーキの販売に来たんだよ。夏だからな。そしたら、……お前が勤めてるって聞いたから」

その途端に、北野森はこの事件に首をつっこみ、今、入院するハメになったのだ。

「わざわざ……お見舞いに来てくれたんですか」
「アイスケーキ持ってきてやったぞ」

ぶっきらぼうな言葉使いは、そのままで。

「生きてて良かった」
「……」

彼女の輪郭が、滲んだ。

「長谷川さん。……ありがとう」



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表紙・目次

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