お隣さんの隣


『僕の名前も呼んで下さいよ』


「え?」


『まだ一度も呼んでくれてないでしょう?』



確かに恥ずかしさもあって一度も呼んでなかった。








『佐奈、早くして下さい』



「は、はいっ!」




意地悪く笑うこの表情は確信犯なのか只の天然なのか…。




でもどっちにしろタチ悪いよっ!



かっこ良すぎるから。





『つ・ば・め。


ほら、たった3文字ですよ』




たった3文字、されど3文字。




3文字あったら結構会話できるよっ?





私の思考回路が彷徨いだしたところで男の子はある行動に出た。











『呼んでくれないんですか…?』

「へ?」


急に声のトーンが下がったと思ったら、その表情はさっきの意地悪い態度とは裏腹に、しゅんとして目はまるで子犬のようで。



その目でじっと私を見つめてくる。






「うぐ…」



そんな目で見られると、なんだか自分がいじめているようで追い詰められた気になってしまう。



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