お隣さんの隣
「つつつつつ…つばばばばっ」
『…ちゃんと呼んでくれなきゃ俺…』
動揺の余り呼べない私。
そんな私を潤みを帯びた目がさらに心を揺らす。
だぁ〜っっ呼びますよっ!ちゃんと言うから!
ほら つ・ば・め !
よしいける!
せーっの!
「っ燕君!」
私は心の中の合図で名前を吐き出した。
心臓は、何で?ってくらいドキドキしてる。
『何ですか、佐奈』
「何ですか、って……そっちが呼ばせたんでしょっ」
『“そっち”?』
「……燕君…」
一度名前を呼ばせて満足したのかまた意地悪に戻ってしまった。
……って、“戻ってしまった。”じゃなくてっ!
「演技だったの!?」
あの可愛らしい子犬は偽物だったのかっ!
酷い。
騙しやがったなこの野郎。
『すいませんって』
謝るってことは肯定ってこと。
年下にまんまと騙されてしまった。