お隣さんの隣
『今日はここまでで終わりにしましょう』
「ふいーっ、疲れた〜」
椅子に座ったまま後ろに伸びをする。
そしたら横に立っている燕君と目があった。
「いてっ」
すると燕君におでこに軽くでこぴんをおみまいされた。
「やめてよ〜」
おでこを擦りながら椅子から立ち上がる。
燕君はクスクス笑っている。
軽くっていっても痛いんだからねっ、もう。
「…で、帰るの?」
『はい。
佐奈は帰ってほしくないんですか?』
「違くて!」
すぐそういう事言うんだから。
「聞きたいことがあるのっ」
“聞きたいこと”
今日夏樹ちゃんと話してた、燕君が私に家庭教師を頼んだ理由。
もともとは全部そこから始まったわけだし。
考えれば考えるほど気になる…。
「あのねっ」
『はい』
燕君は真っ直ぐ私を見つめて聞いてくれている。
そんなに見られたら無駄に緊張するでしょうがっ。
「…なんで私なんかに家庭教師頼んだのっ?
もともと燕君に家庭教師なんてもの必要ないじゃない」