お隣さんの隣
『すいません…』
そう言う燕君はいつか見た子犬の目なんかの寂しさじゃなくて、なんだかすごく、悲しそうだった。
『俺…帰りますね』
カチャ…
私には一言も言葉を発させずに、燕君は部屋から出ていった。
「………」
なんなの今の…。
それに、あんな燕君初めて見た。
確実に悪いのは向こうなのに、この罪悪感は何?
燕君にあんな顔させたくなかった。よく分からないけど後悔してる。
でも……
「なんで私が悩まなきゃいけないわけ…?
…もうやだーーっっ」
顔を両腕で覆った。
そしたら何故か手は濡れて。
「…?」
初めて自分が涙を流していたことを知った。